「國家理性」考
―國家學の精神史的側面―
著者 | 小堀桂一郎著 | |
定価 | 2750円(10%税込) | |
本体 | 2500円(税別) | |
判型 | A5判 | |
体裁 | 上製本・カバー装 | |
発行日 | 平成23年6月8日 | |
ISBN | 9784764602908 | |
ページ数 | 224頁 |
国家への関心と憂戚から「国家理性」の正体を明らかにする
多くの具体的事象を元にさまざまな国難に処してきた過去の日本人のこころに迫る。比較文化の視点から後世に誇れる日本の精神文化を鋭く分析。目次
第一章 「国家理性」考 ―日本史に於ける「理性」の役割―一 Fサヴィエルの日本人体験
二 「道理」と「理性」
三 「国家理性」とは何か
四 イエズス会士の見た徳川将軍の国家理性
五 対決する東西の国家理性
第二章 慣例法の生成過程 ―「関東御成敗式目」誕生の意味―
一 古代に於ける法の姿
慣例法・慣習法の定義
「宣り」としての法の発生
律令制下の世の実情
二 法制から見た近代の開始
北條泰時の発願とその「起請」
「御成敗式目」の法的根拠
「道理」の世紀を拓いた慈円
栂尾明恵上人の「道理」
永平禅師道元の「道理」
三 司法の世紀としての鎌倉時代
第三章 神道の根拠としての「聖なるもの」 ―homo religiosusの擁護と再生のために―
一 根拠といふこと
二 世界宗教と「言葉」
三 惟神之道の寡黙性及価値の範疇について
四 寡黙の実態と「畏敬の心」
五 エリアーデを借りて、homo religiosusとしての日本民族
六 日本人と神々との関係
第四章 維新と伝統 ―両概念の相互関係及びその綜合―
一 「と」の役割について
二 「革命」との辨別
三 「天命」への国学的考察
四 傳統を断絶から護る「維新」
第五章 教育に於ける道徳と宗教 ―二者の辨別は必須にして且つ可能なるか―
一 憲法と教育基本法の怪
二 新渡戸稲造『武士道』の失考
三 西村茂樹『日本道徳論』の構想
四 教育勅語に見る逹成
第六章 東京裁判「鵜澤總明最終辯論」考 ―異文化差別の現場から理性への訴へ―
一 『パル判決書』棹尾の名句
二 南北戦争の教訓
三 人格立証の試みだつた鵜澤辯論
四 緒言に見る「理性」への訴へ
第七章 統帥権と文民統制原理 ―天皇と軍隊・過去の理念型と将来の難問―
序 統帥権とは何だつたのか
東京裁判の遺した謎
露抂した後遺症
天皇と軍隊の関係は?
一 歴史的回顧
「統帥権干犯」の妄論
ロンドン会議で受けた威嚇
「干犯」糾問事件の結末
二 正統憲法学からの見解
美濃部達吉と佐々木惣一
『憲法義解』の役割
『日本外史』忘却の祟り
三 昭和史に於ける国家理性の行衛
昭和天皇の御遺詔
E・ライシャワーvs.福田恒存
『武家諸法度』の道統
四 結語・統帥権の在るべき位置
後記
初出一覧
著者略歴
小堀 桂一郎(こぼり けいいちろう)昭和8年東京生まれ。昭和33年東京大学文学部独文科卒業。昭和36~38年旧西ドイツ・フランクフルト大学に留学。昭和43年東京大学大学院博士課程修了、文学博士、東京大学助教授。昭和60年同教授、平成6年定年退官。平成16年まで明星大学教授。東京大学名誉教授。比較文化・比較文学、日本思想史専攻。
著書に『若き日の森鴎外』(東京大学出版会、昭和44年読売文学賞)、『鎖国の思想―ケンペルの世界史的使命―』『イソップ寓話―その伝承と変容―』(中公新書)、『宰相鈴木貫太郎』(文藝春秋、同文庫、昭和57年大宅壮一ノンフィクション賞)、『森鴎外―文業解題』飜訳篇・創作篇、『森鴎外―批評と研究』(岩波書店)、『戦後思潮の超克』『昭和天皇論』正・続(日本教文社)、『鏡の詞・剣の詩―反時代的考察』(展転社)、『東西の思想闘争〈叢書比較文学比較文化4〉』(中央公論社)、『靖国神社と日本人』『昭和天皇』(PHP新書)、『東京裁判 日本の弁明』(講談社学術文庫)、『皇位の正統性について』(明成社)、歌集『鞆乃音』(近代出版社)など。
平成15年以降、「新日本学」連作として『和歌に見る日本の心』(明成社)、『日本に於ける理性の伝統』(中央公論新社)、『日本人の「自由」の歴史』(文藝春秋)。