伝統芸能と民俗芸能のイコノグラフィー〈図像学〉
著者 | 児玉絵里子 | |
定価 | 1980円(10%税込) | |
本体 | 1800円(税別) | |
判型 | 四六判 | |
体裁 | 並製本・カバー装 | |
発行日 | 令和6年8月16日 | |
ISBN | 9784764601543 | |
ページ数 | 192頁 |
きっとあなたも“恋(鯉)”に落ちる。琉球と大和の文化が行き交う江戸時代初期、歴史の中の“あの頃”に
郡司正勝、本田安次らの後は未着手のままであった初期歌舞伎研究を中心に、近世初期の芸能(歌舞妓・能楽・琉球芸能)と絵画・工芸・文芸を縦横に行き来し、日本文化史を図像学の観点から捉えなおす。時を超え意匠から鮮やかに蘇える近世期-珠玉の日本文化論。本書が紹介されました
目次
はじめに―日本文化のこころに触れる図像学第一章 込められたものがたりの始まりは―鯉と恋と「扇の的」《阿国歌舞伎・遊女歌舞伎》
一 「柳橋水車図屏風」が放つ金色の妖気
二 「遊女柳橋扇面流図屏風」を解く「鍵」は―七面の絵扇
第二章 あらわれた柳の大樹の“謎”―宇治の橋姫と『歌舞伎図巻』「鐘聞」
一 どうして柳の木があるの―柳は夢か幻か。「鐘聞」の“謎”
二 「月」が導く“時(時代)の意匠”
三 江戸時代の表象世界を読み解く〈鍵〉は―たとえ時が移ろうとも……波に洗われた千鳥の足跡は永遠に残る
第三章 舞踊図:画にとどめられた一瞬の舞姿―初期歌舞伎舞踊の「型」の成立と「舞踊図」の誕生《遊女歌舞伎》
一 描かれた「舞踊図」の謎―江戸時代初期に花開いた女性の舞踊姿とは
二 意匠が伝える由来―鳳凰の表された意味は
三 国宝 琉球国王尚家伝来紅型衣裳と左三つ巴紋―海を越えた意匠
第四章 藤の花枝に込められた想いは―大津絵「藤娘」のこころと若衆歌舞伎
一 大津絵「藤娘」の“謎”―あなたは誰?
二 〈謎解き〉のスタート―解く“鍵”「藤の花枝」
三 黒紅地小袖の“娘”―描かれた“踊衣裳”
四 藤娘と“恋の縁結び”―藤の花を折りて……(在原業平)
五 「笹を藤に持ち替えて」の謎―飛び出た藤の花・“絵姿”・記された“ことば”
第五章 洛陽の時と別れ―画に響くのは謡の詞「誰が袖図屏風」に込められた能のものがたり《若衆歌舞伎・野郎歌舞伎》
一 配された情景に物語が流れ出す―日本美術における“御所解模様”
二 画に響くものは謡の詞章―根津美術館蔵「誰が袖図屏風」
第六章 軒端の梅と朝露の花―歌謡と芸能、琉球宮廷舞踊と大和文化
一 軒端の梅と朝露の花―世阿弥作「東北」(仕舞)と玉城朝薫・「かぎやで風」
二 琉球に伝えられた京の都の“淀の川瀬の水車”―「江戸下口説」
三 琉球宮廷舞踊 古典女踊り「諸屯」と大和の宮廷文化
四 『古今和歌集』と琉球芸能の幕開け祝儀舞踊―若衆踊「若衆特牛節」
五 “楽童子”はなぜ元服前の少年であったのか―琉球宮廷舞踊 古典女踊り「柳」
六 琉球に伝えられた“小野小町”
七 咲くやこのはな―琉球宮廷芸能に咲いた“藤の花”
図版典拠・映像一覧
あとがき―図像学と生きる深さ
著者略歴
京都芸術大学専任講師。博士(文学、早稲田大学)早稲田大学大学院文学研究科芸術学(美術史)修士課程修了。沖縄国際大学南島文化研究所特別研究員、法政大学沖縄文化研究所国内研究員、文化学園大学文化ファッション研究機構共同研究員。
東京国立博物館学芸部工芸課染織室非常勤職員、国指定重要無形文化財「紅型」保持者 玉那覇有公主宰・玉那覇紅型工房、浦添市美術館嘱託学芸員を経て、財団法人海洋博覧会記念公園管理財団(一般財団法人沖縄美ら島財団)学芸員。退職後、ドナルド・キーン・センター柏崎学芸員などを経て現職。
単著に、『初期歌舞伎・琉球宮廷舞踊の系譜考―三葉葵紋、枝垂れ桜、藤の花―』(錦正社、2022年)、『琉球紅型』(ADP、2012年)、『図説 琉球の染めと織り』(河出書房新社ふくろうの本、2005年)など。
第十回木村重信民族藝術学会賞受賞。第47回(平成30年度)三菱財団人文科学研究助成採択。
幼少期から、琉球王国最後の国王尚泰王の御令孫 根岸(尚)常子氏の知遇を得る。琉球芸能について、當間一郎氏(沖縄藝能研究)・西江喜春氏(歌三線)・宮城幸子氏(琉球舞踊)・親泊興照氏(琉球舞踊・組踊)・宮城英夫氏(笛)に師事。早稲田大学および同大学大学院で村重寧教授(現名誉教授)に師事、琳派研究(尾形光琳・俵屋宗達)に取り組む 。